◎日常生活でも起こりうる「肋骨骨折」について
くしゃみをしただけで肋骨が折れた――そんな話を耳にしたことはありませんか?一見大げさに思えますが、肋骨骨折は日常生活の中でも意外と身近に起こりうるケガです。今回は肋骨骨折の原因や症状、治療法、日常生活での注意点に加え、近年注目されている「肋骨の疲労骨折」についても解説します。
◇肋骨骨折とは?
肋骨骨折とは、胸部にある12対の肋骨のうち、いずれかが骨折することを指します。肋骨は胸郭を形成し、肺や心臓などの重要な臓器を保護する役割を担っています。骨折すると、その保護機能が一時的に損なわれるため、注意が必要です。
◇肋骨骨折の主な原因
・転倒や交通事故などの強い衝撃
・スポーツ中の接触や衝突
・強い咳やくしゃみ、重い荷物の持ち上げによる圧力
・骨粗しょう症によって骨が脆くなっている高齢者では、軽い圧力でも骨折が起こることがあります
◇肋骨の疲労骨折について
肋骨骨折の中でも、スポーツ選手や体を酷使する仕事の方に多いのが「疲労骨折」です。これは1回の大きな衝撃ではなく、同じ動作や負荷を繰り返すことで骨に微細な損傷が蓄積し、最終的に骨折に至るものです。
●疲労骨折が起こりやすい例
・野球の投球動作やゴルフのスイング
・重い器具を繰り返し持ち上げる作業
・姿勢を崩したままの長時間の作業や運転
●疲労骨折の特徴
・明確な外傷がない
・最初は鈍い痛みから始まり、徐々に強くなる
・深呼吸や身体をひねると痛みが増す
・安静にしても数日で痛みが引かない
疲労骨折はレントゲンでは写らないことも多く、必要に応じてMRIやCT検査で診断されます。
◇症状と診断
・胸や脇腹の鋭い痛み
・深呼吸や咳、くしゃみで痛みが強くなる
・押すとピンポイントで強い圧痛がある
・腫れや内出血を伴うことも
・疲労骨折では、最初は動作時にだけ痛みがあることも多い
病院では、まず問診と診察を行い、必要に応じてレントゲンやCT検査で状態を確認します。疲労骨折の場合は、MRIによる検査が有効です。
◇治療と回復期間
肋骨骨折(外傷性・疲労性問わず)の多くは、保存療法によって自然治癒が可能です。手術を行うケースはまれで、以下のような対応が取られます。
・患部に負担をかけないように安静を保つ
・鎮痛薬や湿布の使用
・咳やくしゃみをする際は患部を軽く押さえて痛みを和らげる
・深呼吸や軽い肺活量訓練(肺炎の予防に有効)
【回復の目安】
・軽度な骨折:2~4週間
・完全治癒:4~6週間程度
・疲労骨折の場合も3~6週間ほどが一般的な回復期間です
◇胸部バンドの使用について
以前は胸部バンド(バストバンド)などでの固定が行われていましたが、近年では呼吸を妨げてしまうリスクや肺炎の原因になる恐れがあることから、軽度~中等度の肋骨骨折には推奨されないケースも増えています。使用の判断は医師の指示に従いましょう。
◇日常生活で気をつけたいこと
・激しい運動や重い荷物の持ち運びを避ける
・就寝時は痛みの少ない体勢(横向きなど)をとる
・咳やくしゃみが出るときは患部を軽く押さえる
・骨密度の低い方は栄養バランスや運動習慣を見直しましょう
◇まとめ
肋骨骨折は、交通事故のような大きな衝撃だけでなく、日常生活やスポーツの繰り返し動作によっても起こる可能性があります。特に疲労骨折は見落とされがちですが、痛みが長引くときは放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。